切除不能局所進行膵癌 FOLFIRINOX vs GEM+nab-PTX (JCOG1407試験)

がん関連

今年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO2021) で発表された局所進行膵癌 UR(切除不能) に対する mFOLFIRINOX vs GEM+nab-PTX のランダム化第Ⅱ相試験 (JCOG1407試験) の結果です。

切除不能な局所進行膵癌を対象とした国内で初めての mFOLFIRINOX vs GEM+nab-PTXのランダム化試験ですが、第2相試験ですので、どちらが優れているかは明確には言えない試験デザインです。しかしながら、日々の臨床におけるクリニカル・クエスチョンの参考になる意義のある試験だと考えます。

URの中央判定や、奏功例に対するResectability (切除可能かどうか) の評価、Conversion (切除への転向) 割合のデータが開示されていないなど、エキスパート外科医、画像診断に要する放射線科医も含めた多職種連携試験ではないので、いわゆる薬物のパワーだけをみた腫瘍内科医だけによるコンサバ試験というバイアスがあります。一方で、奏功割合や腫瘍マーカーCA19-9 の反応比較などのデータは参考になります。

追跡期間が1年ほどで、切除の介入次第では生存曲線も変わってくるはずですが、この結果を日常診療にどのように外挿していくのか、第2相試験ではありますが、いろいろと考えさせられる前向き試験結果だといえます。

大場 大

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東京目白クリニック院長 医学博士 外科学・腫瘍学・消化器病学の専門医。大学病院レベルと遜色のない高度な医療が安心して受けられるクリニック診療を実践しています。

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大場 大

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外科医 腫瘍内科医 医学博士     1999年 金沢大学医学部卒業後、同第二外科、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教を経て、2019年より順天堂大学医学部肝胆膵外科 非常勤講師を兼任。2021年 「がん・内視鏡・消化器」専門の 東京目白クリニック 院長に就任。これまでになかった社会的意義のある質の高いクリニックを目指す。書籍、メディア掲載、講演、論文業績多数。

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