これまで、人間ドックや職域健診の検査項目として腹部エコー検査を受けたことのある方は少なくないはずです。しかしながら、その結果の信憑性についてあまり議論されることがありません。多くは、画像も供覧されず詳細な説明もないまま、簡略に結果のみが伝えられているのではないでしょうか。いや、うちはしっかりやっていますという施設は、本話題には相当しませんので悪しからず。
この問題は、内視鏡検査についても同様に言えることです。当然のことながら、検査の質は検査をする者に依存します。腹部エコーの場合、検査実施者は医師ではなく検査技師が行っている施設が多いようです。もちろん、しっかりとした教育が行き届いている勤勉な検査技師であればエコー検査で問われる「存在診断」は信頼できるといえます。だがしかし、皆がみなそうだとは限りません。とりわけ膵臓に関しては、疾患や病態のことがあまりよくわかっていない技師においては診断レベルに限界があるのもまた事実でしょう。
話はそれますが、国内の人間ドックや職域健診業界は、法律の裏付けや運用指針が明確でないことが多いため、検査の精度管理が担保されていないカオスな世界と言っても過言ではありません。巷に数多あるドック専門の医療機関を覗いてみると、規模の大小問わず、その実情は営利主目的を全面に打ち出しいることが多く、医療の質の担保は二の次、三の次であることが容易にみてとれます。決して、箱・空間やアメニティ・サービスで誤魔化されないようにしましょう。最優先事項は、言わずもがな「医療の質」であるべきです。
なぜそのような問題提起をするのか。医療の質を決めるのは、先にも述べた通り紛れもなく医師や医療従事者の質に等しいわけですが、ドック・健診センターの類に雇用されている医師の多くは、就職先のあてのない質の悪い医師か教育の所在不明なアルバイト医師に依存していることがほとんどだからです。看護師レベルとなると、もはや烏合の衆と化しています。あれも出来ない、これも出来ない、まともな現場では機能しない粗悪な看護師のうまい就職先となっていることがほとんどでしょう。
話をもとに戻しますが、多くの方は「大丈夫」というお墨付きがほしいためにドックや健診を受けているのではないでしょうか。本ブログで今回取り上げるテーマは、人間ドックの腹部エコー検査で常時「異常なし」とされていたケースの実際を具体的に取り上げ、膵臓がんリスク因子について理解を深めていただくことにあります。
以下に提示するケースは、東京目白クリニックで人間ドックを受けた方たちです。すべての症例で膵臓がんリスクを有しています。
膵臓がん罹患数、死亡者数が増多の一途をたどっている現状、質の悪い人間ドック・職域健診での安易な「異常なし」には注意が必要です。
■最大径12mmまでの分枝型 IPMNが多発 ■膵萎縮 ■膵辺縁が凸凹不整
■最大径20mmまでの分枝型 IPMNが多発
■最大径14mmまでの分枝型 IPMNが多発 ■膵萎縮 ■膵辺縁が凸凹不整
■祖父: 膵臓がん ■主膵管拡張: 4mm ■びまん性に膵萎縮
■糖尿病 ■主膵管拡張: 5mm ■膵辺縁が凸凹不整
■母: 乳がん 祖父: 膵臓がん ■最大径5mmの分枝型IPMN ■膵辺縁が凸凹不整
■父: 膵臓がん ■糖尿病 ■最大径8mmまでの分枝型 IPMNが多発
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