クリニックでは国内初の「免疫チェックポイント阻害薬」適正使用許可

がん関連

自費診療の詐欺的クリニックにはご用心ください

真のがん免疫療法として承認されている免疫チェックポイント阻害薬、抗PD-1抗体薬の「ニボルマブ (オプジーボ)」と「ペムブロリズマブ (キイトルーダ)」、抗PD-L1抗体薬の「アテゾリズマブ (テセントリク)」「デユルバルマブ (イミフィンジ)」、抗CTLA-4抗体薬の「イピリムマブ (ヤーボイ)」が、東京目白クリニックでの適正使用認可をクリニックとしては国内で初めて各製薬企業より承認されました。当クリニックの施設基準や専門性・経験則、ならびにがん診療に対する真摯な取り組みが評価されたことを意味します。
 ということは、勝手に上記薬剤を使用している他のクリニック・診療所の薬剤入荷方法は、正規卸ではなく闇ルートで仕入れているということになります。また、適正な使用量ではなく、ごく少量のみを使用して薬価の何倍もの法外な金額を請求しているようです。具体的には、患者一人あたりに使用すべき薬剤バイアルから、何人分もの量を使い回しして悪質な商売をしています。そのようなクリニックに共通するのは、素人がインチキ “免疫細胞療法” と併用で行っていることです。自費診療のがん免疫細胞療法クリニックにはくれぐれもご注意ください。

【付記】
患者さんを幸せにする立派な治療であるならば隠しておく必要はなく、世界中の同様な多くの患者さんに対しても広く迅速に届けられるべきと考えます。そのための科学的検証作業が、臨床研究やランダム化比較試験です。その場合、患者さんから高額な費用を徴収することはありません。真に画期的な治療なら、当然のごとくノーベル医学賞の対象にもなりえます。

要するに、がん治療と称する以上は、どこにあっても普遍的な意味をもたないといけません。ところが、あるクリニックへ行かないと受けることができない治療、高額な費用を支払わないとできない治療、ということは何かが変だと批判的に吟味したほうがよいでしょう。 それらの医療機関に所属している医師や看護師らのほとんどは素人ですが、詐欺的医療の客寄せとして立派な肩書を利用することを名目に高収入で雇われている医師もいるのでなお厄介です。声を大にして免疫細胞療法の宣伝に勤しんでいるクリニック院長や関係者らのなかには、インチキ商品を扱っている上位組織の会社株を大量に保有し、もはや医学を扱う者としての公正さや中立性を失った悪質な一貫性も垣間見れます。

心配や不安でいっぱいの患者心理を考えると、いくら科学的根拠のない藁であってもすがりたいと思ってしまう心情は重々理解できます。ただ、もし「偽の藁」と事前に理解できていれば、貴重な時間やお金を一方的に奪われることなく、ご自分のため、ご家族や愛する人たちと過ごすための有意義な使い道はいくらでもあるような気がします。

詐欺的クリニックで行われている「免疫細胞療法」の理屈は、免疫の攻撃を高めるアクセル方法です。攻撃を司るエフェクター細胞である「細胞障害性T細胞」「γδ(ガンマデルタ)T細胞」「NK(ナチュラルキラー)細胞」などを患者のリンパ球から採取して、体の外で培養し、数を増やしたり、刺激を加えたりなどして、がんに対する攻撃力を高めると吹聴しながら再び体に戻す「活性化リンパ球療法」が行われているようです。このやり方は、すでに1980年代から2000年初頭まで実験的に幾多も行われてきましたが、有効性を証明できたエビデンスがつくられることなく失敗を繰り返してきました。その負の歴史を無視し、日本国内では世界に類をみないほど、相も変わらず同様な胡散臭い治療で素人が盛んに商売している忌々しき現状があります。声高に「γδ(ガンマデルタ)T細胞」「NK(ナチュラルキラー)細胞」を叫んでいる医療機関があれば、詐欺的キーワードとみなしてよいでしょう。

同じエフェクターT細胞療法でも、がん組織から腫瘍浸潤リンパ球を分離し、体外で培養し増殖させたあとに患者体内に戻すという (国内のクリニックレベルでは到底不可能) 高度な科学的基盤を要する標的抗原エフェクターT細胞療法は、世界中のアカデミアで臨床研究という形でその有効性が調べられている最中です。ほかにも、腫瘍抗原特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法 (TCR-T細胞療法)や、すでに急性リンパ球性白血病や非ホジキンリンパ腫を含む再発・難治性血液疾患で実用化されているキメラ抗原受容体 (CAR)遺伝子導入T細胞輸注療法は、まさにT細胞のアクセルを強化した有望な治療法と考えられていますが、まだまだ固形がんで実用できるレベルには達していません。さらに注意しないといけないのは、一時期、新型コロナウイルス感染症の重症例で話題となったサイトカイン放出症候群 (サイトカインストーム)や脳症など重篤な副作用に対応できるための集中治療室がある厳重な診療体制が必要であり、巷のクリニックで宣伝されているような決して「からだに優しい」「副作用がない」お気軽な治療ではありません。免疫チェックポイント阻害薬も画期的な治療法ですが、その有効性を享受できる患者の割合は一定数のみであり、それとは裏腹に同じく命を奪いかねないような重篤な副作用が起きることもあります。

「がんワクチン療法」についても同様です。がん細胞に対する細胞障害性T細胞の免疫応答は、がん細胞として認識される目印「がん抗原」に対する出来事なので、これまで「がんペプチドワクチン療法」「腫瘍細胞ワクチン」「樹状細胞ワクチン」などが数多試みられてきましたが、その有効性は微々たるもので単なるプラセボ効果程度の結果しか出せませんでした (Nat Med 2004; 10: 909-915)。一方、がん細胞による非自己として生じてくるネオ抗原 (neo-antigen) は、細胞障害性T細胞のより強い免疫応答を促すと考えられ、現在、世界中の優れた基礎研究者とエキスパート専門医らが手を取り合って臨床研究として行われている最中です。もちろん、日本国内のクリニックや民間病院で展開されている「ネオアンチゲン詐欺」のような代物とはまったく異なります。
同様に、声高に「がんペプチドワクチン療法」「樹状細胞ワクチン」「ネオアンチゲン療法」を叫んでいる医療機関があれば、これらも詐欺的キーワードとみなしてよいでしょう。

まとめますと、詐欺的クリニックで行われている高額な治療の宣伝文句をみると「副作用がない、安全である」ことが強調されていますが、いまある真のがん免疫療法は “諸刃の剣” で、必ず重篤な副作用が起こりうることを常に念頭に置かなければいけません。要するに、詐欺的クリニック治療を投与して副作用 が な い の は 「免 疫 応 答 が 起 こ っ て い な い 」と 考 え るべきです 。 新型コロナウイルス感染症ワクチンですら、副反応で悩まされる方が多かったはずです。もちろん副 作 用 が な いに越したことはないのですが、 現状の医学レベルでは不可能なわけです。「副 作 用 が な い」 こ と を 強 調 している時点で、 免疫系に働きかけている作 用 などなく がん治 療 と い う 観 点 か ら は 実は「何 も 起 こ っ て い な い」詐欺 と い う こ と を 強く示 唆 し て い ます。それが、すべてのがんに効く….? 患者さんの弱い心理につけ込み、単なるプラセボ効果にしか過ぎない素人治療に対して法外な費用を搾取している詐欺的クリニックにはくれぐれもご用心ください。

大場 大

大場 大

東京目白クリニック院長 医学博士 外科学・腫瘍学・消化器病学の専門医。大学病院レベルと遜色のない高度な医療が安心して受けられるクリニック診療を実践しています。

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大場 大

大場 大

外科医 腫瘍内科医 医学博士     1999年 金沢大学医学部卒業後、同第二外科、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教を経て、2019年より順天堂大学医学部肝胆膵外科 非常勤講師を兼任。2021年 「がん・内視鏡・消化器」専門の 東京目白クリニック 院長に就任。これまでになかった社会的意義のある質の高いクリニックを目指す。書籍、メディア掲載、講演、論文業績多数。

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