抗がん剤 「5-FU」 注射薬をどうしても卸すことが不可能だと協和キリンの営業所長が謝罪に来られました。アブラキサン 問題で、膵がん患者さんにとって重要な治療法をひとつ失い、代替として FOLFIRINOX や オニバイド 療法を予定していた患者さんが標準治療を受けられないことになります。これが意味するのは、根拠あるすべての最善治療が、メーカーの都合、国内製薬業界の都合によって受けられないということです。こうした事態は倫理的に許されるのでしょうか。どうやら、シェアを独占していた唯一の後発品 (ジェネリック) を扱う東和薬品が、急遽、供給制限をかけたことが発端のようですが、患者さんに向けた透明性のある情報提供をなにも行っていません。この薬品会社の企業体質は大丈夫でしょうか。もちろん、膵がん患者さんのみではありません。胃がん、大腸がん患者さんにとって FOLFOX や FOLFIRI 療法を失うことになります。他がん腫でも、5-FU を軸とした重要な治療法があります。一刻も早く、国内製薬業界にはびこる膿の排出と改善策を求めます。
大場 大
外科医 腫瘍内科医 医学博士 1999年 金沢大学医学部卒業後、同第二外科、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教を経て、2019年より順天堂大学医学部肝胆膵外科 非常勤講師を兼任。2021年 「がん・内視鏡・消化器」専門の 東京目白クリニック 院長に就任。これまでになかった社会的意義のある質の高いクリニックを目指す。書籍、メディア掲載、講演、論文業績多数。
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