腫瘍マーカーの数値のみで抗がん剤治療が変更されていませんか

がん関連

抗がん剤治療中の患者さんにとって、いま現在行っている治療はとても大切であり、保険診療で使用できる薬剤を上手にすべて使い切ることで、生存利益も延長するのは明らかです。
 しかしながら、抗がん剤治療に不慣れな医師の中には、腫瘍マーカーの数値の推移のみで、「いま行っている抗がん剤治療は効かなくなった」と判断し、容易に治療変更が余儀なくされている患者さんが少なくありません。
 腫瘍マーカーの数値は、数字化されるので心配になってしまうのは当然ですが、数値がいくら高くなってしまっても、それだけで「いま行っている抗がん剤治療は効かなくなった」というわけではありません。
 今行っている治療が本当に効かないと判定するためには、必ずCTあるいはMRIなどの画像検査が必要であり、そしてさらに必要なことは、前回の同じ検査画像所見と比較をしてどうであるか、さらには治療を始める前 (ベースライン) の同じ画像所見と比較をしてどうであるのかを、しっかり正確にサイズを計測したうえで評価されなくてはいけません。
 腫瘍マーカーの情報のみではもちろんのこと、病気がなんとなく大きくなっているからという理由のみで進行 (PD) と評価され、気軽に治療法を替えられてしまうのは非常に勿体ないことです。

今行っている治療が効いているのか、効かなくなっているのかを評価する診断基準ツールをRECIST (レシスト) と呼びます。Response Evaluation Criteria in Solid Tumors の略称です。詳細については下記 (日本語訳JCOG版ver1.0) をご参照ください。

http://www.jcog.jp/doctor/tool/RECISTv11J_20100810.pdf

以下、主に病勢の評価のうえで重要となるツールについて、簡潔に記しておきます。

■ がん腫瘍病変の長径が10mm未満、リンパ節病変の短径が10mm以上15mm未満の場合は、測定不能と扱われます。ほかにも、腹水や胸水なども測定不能病変です。

■がん腫瘍病変の長径が10mm以上、リンパ節病変の短径が15mm以上ではじめて標的病変とみなされ、CTやMRI上でしっかりサイズが測定されねければなりません。

■ベースライン (治療前) の評価は、2個以上の測定可能病変を認める場合、各臓器につき最大2病変まで、合計5個までの全標的病変の径の和を測ります。腫瘍病変の場合は、それぞれ長径を、リンパ節転移の場合は短径を測定します。

■全部の標的病変の径の和を出します。腫瘍病変 (長径)+リンパ節転移病変 (短径)=ベースライン径和として比較対象とします。

■治療を行っている最中に、CTもしくはMRIを行った場合、その画像検査所見に対してもう一度、先述と同じ作業を行います。以下、効いている、効いていないの専門的な評価となります。進行 (Progressive Disease: PD) と評価された場合にのみ、治療法変更を検討します。SDの場合は、治療変更はしません。
【完全奏功 (Complete Response: CR)】 ⇒すべての標的病変の消失
【部分奏功 (Partial Response: CR)】⇒ベースライン径和と比較して、30%以上減少
【進行 (Progressive Disease: PD)】⇒経過中の最小径和と比較して、20%以上増加 絶対値でも5mm以上増加
【進行 (Progressive Disease: PD)】⇒明確な「新病変」が見つかった場合や非標的病変の明らかな増悪がみられた場合
【SD (Stable Disease: SD)】⇒PRに相当する縮小がないか、PDに相当する増大がない

大場 大

大場 大

東京目白クリニック院長 医学博士 外科学・腫瘍学・消化器病学の専門医。大学病院レベルと遜色のない高度な医療が安心して受けられるクリニック診療を実践しています。

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大場 大

大場 大

外科医 腫瘍内科医 医学博士     1999年 金沢大学医学部卒業後、同第二外科、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教を経て、2019年より順天堂大学医学部肝胆膵外科 非常勤講師を兼任。2021年 「がん・内視鏡・消化器」専門の 東京目白クリニック 院長に就任。これまでになかった社会的意義のある質の高いクリニックを目指す。書籍、メディア掲載、講演、論文業績多数。

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